ウィーン・プラハ１０日間（5）

４月２０日（火）美術史美術館（２）

電車で美術史美術館へ戻る。１０時６分。風が結構冷たい。美術史美術館は自然史美術館とマリア・テレジア広場を挟んで建っている。ウィーンの城壁を取り払って新しい町を作る一環として計画され、１８６６年のコンペを勝ちぬいたカール・ハーゼナウアーの作だそうだが、例のドレスデンのオペラ座を設計したゼンパーの手も加わっている。

美術史美術館　　左手はマリアテレジア像

入館に際しては、まず、幸齢者割引がないかを聞くことにしている。ここでは六十歳以上は学生並みの７０シリング（普通は１００シリング）だった。

階段の壁画にはクリムトの物も見られる。中央階段の正面を飾るテセウス群像は圧巻と言うべきだろう。

テセウス群像

まず、二階右手に入りイタリア絵画だ。ティツィアーノの「ジプシーのマドンナ」、「ヴィオランテ」、「ブラーヴォ」から始まる。そして、アントネルロ・ダ・メッシーナの「聖母と聖人達」。書いていたらキリがない。

ジプシーのマドンナ　ティツィアーノ（１５２０）	弓を削るアモール　右がパルミジャニーノ作（１５３３）　では、左は？

ガイドブックには二階の絵画ギャラリー中の必見はブリューゲルの「狩人の帰還」「農民の婚礼」、ヴェラスケスの「王女マルガリータ」、ルーベンスの「毛皮をまとった婦人」、フェルメールの「アトリエの画家」を上げている。

フェルメールの「アトリエの画家」は脇の部屋にあった。なるほどこれがそれかと言ったところで紫竹のごときが感想など書くものではない。が、グループを案内しているガイド達がここで特に説明している様でもないのはどう言うことか。

アトリエの画家　フェルメール　右は模写のためのイーゼル

そばには模写がイーゼルに立ててあった。他では実際に模写中のところがあり、画家が、絵を観てはちょっと描き込むと言う動作を一生懸命繰り返している場所もあったが、ここには画家の姿はなかった。別のところでフラッシュ（写真を撮ることは許されているが、室内でのフラッシュは禁止されている）をたいている人があったので見ると、その人が描いたらしい模写と実物との写真を撮っているのであった。

ガイドブックには「ブリューゲル（年長）の子供の遊びの模写」として載せられている写真があるが、その写真にも進行中の模写が写っている。その解説に「この絵の模写は相当に骨の折れる仕事になりそうだ。」とあるが、そのとおり現時点でも進んでいる様子はあるものの未完成である。

子供の遊び　ブリューゲル（年長）　右下は模写の途中

模写と言うのは大変な作業なのだろう。自分の意思で書くのではなく、同じ色、同じタッチを出さねばならないのだろうから、並々ならぬ根気の要る仕事である。でも、実物と模写とを比べて見ると、やはり模写の方はややはっきりした絵になっているような気がしたのは仕方ないことか。

スペイン絵画では、ヴェラスケスの「薔薇色のドレスのマルガレーテ・テレサ」、「青いドレスのマルガレーテ・テレサ」など。かわいらしい。

ブリューゲル。ハプスブルグ家のルドルフ２世は、最も熱心なコレクターだったが、彼の収集した作品は３０年戦争の余波で散逸したのだそうだ。しかし、ブリューゲルの作品はその難を免れた。ブリューゲルのファンなら見逃せない。「雪中の狩人」「謝肉祭と四旬節の間の戦い」「バベルの塔」などもある。

デューラーなど。ドイツ紙幣の原画はみんなデューラーの物だそうだが、なるほど肖像画家としては並々ならぬ技術を持つ人である。「皇帝マクシミリアン１世」「梨を持つ幼児キリストを抱く聖母」、「ヴェネツィアの若い婦人」、「千人のキリスト教徒の巡礼」など。

グロテスクな肖像画を書いたことで知られるジュゼッペ・アーチンボルトの基礎物質寓意画シリーズの水、火など。見れば見るほどグロテスク。ルーベンスなど。ルーベンスの「受胎告知」（１６０９）、レンブラントの「大きな自画像」など、また、先に書いたフェルメールもこの部門にある。

１階はエジプトのコレクションなどがあるが、ペルガモンや大英博物館を見た目にはちょっと物足りない。このほか彫刻、工芸、時計、自動機械などのコレクションもある。

１５時半過ぎ外に出て、ハンドバッグに入れていたパンを鳩にやっている。と、どこからか雀が出てきて横からついばもうとするが鳩が追っ払ってしまう。一体この雀はどこから来たのか。やがて、そばの潅木の中からチュンチュンと聞こえるからその中にいるらしいことが分かった。細かくしたパンをその中に入れてやる。ここなら鳩も邪魔出来まい。

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